オールデン解体新書

特集 | オールデンを分解する!

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1884年(明治17)に産声を上げたAldenカンパニー

ニューヨーク州知事グロバー・クリーブランドが、メイン州選出のアメリカ合衆国上院議員ジェイムズ・G・ブレインを僅差で破り、南北戦争の前の1856年以来の民主党大統領になった正にその年にAlden社は誕生しました。かれこれ135年も昔の話です。

日本はというと、のちに連合艦隊司令長官となる山本 五十六(やまもと いそろく)が誕生した年でもありました。ちなみに山本は新潟県の生まれでした。なんだか妙な縁を感じます。

オールデン解体(買いたい)新書

余談はさておき、今回はオールデン解体新書と題しましてオールデンの中身を徹底紹介して参りたいと思います。なかなか見ることのできないその中身とは?

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オールデン990バリーラストを解体する

今回ぶった切りられてしまうオールデンは、有名な木型のBARRIE Last (バリーラスト)の990 CLIPPER SHELL CORDVAN #8、そしてMODIFIED Last (モディファイドラスト) の54331 V-Tip SHELL CORDVAN BLACKの2足 (もちろんrejectです)。

まずは、その歴史が長い990からわかりやすくバラしていきましょう!

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ヤメテ〜!!————————————-ズザッ!—–ウッ!

BUSHI

パカッ

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990バリーラストの内部構造

普段なかなか見ることのできない靴の内部構造。それもオールデンの990です。下の写真は、左足の外側になります。目につくのはソールの厚み。もともとダブルレザーソールの靴なので肉厚だというのは知っていましたが、インソールもしっかりと厚みのあるものを使用しているんですね。

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990のはらわた

コルクもつま先から踵までしっかりビッシリと敷き詰められています。ところどころには、コットンキャンバスで養生してあります。トゥ部分には中芯も見えます。予想外に分厚いなぁと思ったのはヒールのバックステイ部分。インソール+コルクと同程度の厚みがあるんです。

アイアンシャンク

土踏まず部分の下、コルク直下には鉄の板“アイアンシャンク”が存在しています。オールデンの靴の全てに早着されている鉄板ですが、他のブランドだと樹脂だったり竹だったり革だったり。他にはないオールデンならではの特徴の一つで履き心地の良さに直結する部分です。

SecurityGate

オールデンユーザーあるあるですが、空港のセキュリティチェックを通過する際に金属探知機がビーッビーッと反応して赤色灯と共にアラート音がなる原因ともなっています。恥ずかしいはずなんだけど優越感もあるのはオールデンだからでしょうか。

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ライニングの構造

お次は、インサイドです。基本的にはアウトサイドとそう変わりません。アウトサイドにもありましたが、トゥ裏とヒールカップ部分にある傷。これは、靴を作る際に装着してあった木型の痕跡で、靴から木型を抜き取る際に必ず生じる傷です。手作り靴ならではのものです。慣れたお客さんになると「いい傷入っているねぇ!」と冗談を言う人も。

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上図はアッパーだけを剥がしたものの裏面ですが、先裏に傷が入っているのが分かるかと思います。
アッパーもライニング、シュータン、前後中芯などなど結構たくさんのパーツが使用されています。

古典的な作りのフットベッド

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上の写真はフットベッドのパーツです。“大”みたいな形のマークに“Genuine Leather ◯◯”と書いてあるものを見たことがあると思います。これは、本革を使っていますという印。マークの由来は1頭の牛の皮を開くとちょうどこの形だから。頭、4本足、尻尾からなっています。

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肉厚のインソールの裏面には、リブが装着されていて、プール状の窪みにペースト状にしたコルクがびっしりと敷き詰められています。このコルクの硬さや量のセッティングを変えることで履き心地を自在に変化させられるとか。その隣は、ミッドソールです。これも履き心地に影響のあるパーツであり、アッパーと本底を組み合わせる基礎となるパーツ。990はミッド×2枚を重ねてあります。四角い鉄板は、先ほどお話した“シャンク”です。もぅ、糊でベタベタ(笑)

フットプリントと言って次第に足裏の形にフットベッドが沈み込み、いつしか所有者だけの靴に仕上がって行くのがGood Year Weltedで作られた靴の素晴らしさです。そういう意味で中古の靴を買うというのは他人の足型がフリントされた靴を履くということですから、本質から逸脱していると言えるでしょう。それは所有欲求を満たす為だけにオールデンを持っているとも言えます。本当に履き心地の良い靴を求めるなら新品購入に限ります!

真横から見たフットベッド(インソール)

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フットベッドとミッドソールを組み合わせたところ

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ウエルトも重要なパーツ

こちらの細長いものは、リバースウエルトというパーツです。日本では立ちコバと呼ぶこともあります。990ではデフォルトのパーツ。雨の侵入を防ぐストームウエルトという別のパーツもあり、それはインディブーツで採用例があります。

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アッパーの構造を見る

いまや希少なシェルコードバンアッパーです。990は、CLIPPERというデザインのプレーントゥダービーですが、アッパーは一枚革で作られています。シュータンは別パーツですが、ホールカットのようなもの。贅沢なデザインですね。甲革に履き皺を入れるのはオールデン購入者の醍醐味と言えます。

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Vチップも一刀両断にする

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最後にVチップ 54331のクォーターカットをご覧にいれます。勿体無いなぁと思うかもしれませんが、これもrejectですのでノープロブレムです。レギュラーウエルトのシングルレザーソールなので、作りは至ってシンプルです。しっかりと充填されたコルクペースト。グッドイヤー製法の構造も良く分かるカットです。特に見て頂きたいのはつま先部分。非常に複雑な構造をしているんです。

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昔ながらの工場で手作りされる本格革靴は、1足が出来上がるまでに非常に多くの人々が関わると言われます。大雑把に言うと牧場からスタートして、食肉工場で肉骨皮に分けられ、皮を加工するタンナー(革工場)で皮革に。そして、靴メーカーに革が運ばれてからは、パターンナー、甲革師、底材師、縫製、染色、仕上げ、梱包、発送・・・etc。これだけでもものすごい人数が関わっています。高価な理由が少しは理解できたでしょうか。

1800年台からサステナブル

Environment

一応付け加えておきますと、革靴を作るために動物を屠殺することはほとんどありません。全てはみなさんがいつも食しているお肉の残り物、本来なら破棄される副産物としての皮を有効利用したものなのです。出来上がった革靴は長寿命かつ修理が効きます。天然由来の素材で作られているので、最後は地球環境に戻ります。非常に無駄の少ない効果的なサイクルをはるか昔の人類は生み出してくれました。

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そんな背景を頭の片隅に入れて頂き、靴を購入したら愛情をもって丁寧に履いて、磨いてエイジングを楽しみながら大切に長く愛用する。時には美味しいお肉も沢山食べて食肉業も潤って経済も回る。手間暇を掛けた本物本格靴を所有することで、多くの人々の笑顔が増えたら嬉しいですね!

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