チロリアンシューズの故郷
イタリアF.lli Giacometti (フラテッリ・ジャコメッティ)社の登山部門のブランドMarmolada(マルモラーダ)の名作Tyrolean shoes(チロリアンシューズ)FG119のお話です。その前にブランド名の由来になっているマルモラーダについて少し触れておきましょう。
マルモラーダ(Marmolada)とは、イタリアのドロミーティ(Dolomites)山脈に位置する最高峰であり、標高は3,343メートル(10,968フィート)です。この山は、ドロミーティ山脈で最も高く、その頂上は氷河に覆われています。
Marmoladaのロゴ頭文字「M」は、マルモラーダ山頂をデザインしたものと言われています。
マルモラーダは、主にドロミーティ山脈の中央部に位置しており、ヴェネト州とトレンティーノ=アルト・アディジェ州の境界にまたがっています。山の頂上には、フェデラツィオーネ・アルピーニスム(イタリアのアルピニスト協会)のシェルガンツ・デル・ピジン(Rifugio Piz Boè)と呼ばれる山小屋があります。
マルモラーダ周辺の景観は非常に美しく、登山家やアウトドア愛好者にとって魅力的なエリアです。ドロミーティ山脈はユネスコの世界自然遺産に登録されており、その特有の岩の形状や美しい風景が観光客を引き寄せています。マルモラーダ周辺には、冬にはスキーリゾートや夏にはハイキングやクライミングなどが楽しめる施設があります。
チロリアンシューズとは
Tyrolean shoes(チロリアンシューズ)は、通常、オーストリアやバイエルン地方などアルプス山脈周辺の地域で伝統的に作られている靴のスタイルを指します。これらの靴は、伝統的なアルプス地方の民族衣装である「トラハテン」や「レーダーホーゼン」などと一緒に着用されることがあります。
チロリアンシューズの特徴的なデザインには、しばしばレザーでできた厚底の部分や、装飾的な刺繍、靴紐などが含まれます。これらの靴は、山岳地帯での履物としての機能性と共に、地元の伝統的な文化や衣装の一部としても重要な役割を果たしています。
この種の靴は、観光地や特定の文化イベントでの衣装として人気があり、一般的にはフォークロアや伝統的な行事などで見られることがあります。
FG119の傑作モデル
FG119は、日本では2010年前後から輸入されたマルモラーダのチロリアンシューズです。先述した通りのフェイスデザインを持つ軽登山シューズの趣を表現した靴です。無骨なスタイルとお洒落な刺繍が特徴的です。革の種類によって様々なモデルが存在しているのですが、中でもTEMPESTI VACCHETTA ELBAMATTレザーを使用したモデルは最高です。オイル含有量の高い牛革で、しっとりとした優しい艶感に覆われていて、使い込むとさらに風合いが増してくる革です。多くの靴職人が一度は使ってみたい革とも言われているそうで、本職が欲しがるくらいの革ですから、われわれコンシューマーにとっていかに素晴らしい魅力に溢れている革なのかは、想像に難くありません。
デザインは、ドシっと重量感があり、各部ディテールも半端なく手が込んでいます。たとえばシューレースは、あたかも使い込まれたような表情が最初から与えられています。長年使い込んで黒ずんだような表現をあえてしてあるのです。革素材の良さも手伝って本格靴の風格すら漂います。カジュアルシューズでここまで振り切れるのは、登山靴を愛して止まないマルモラーダシリーズならでは言えるでしょう。
FG119のディテール
FG119チロリアンシューズは、木型に282番を使用します。ゆったり目の足入れ感が特徴的で、登山靴あるあるですが、厚手のソックスで最も心地よいフィーリングとなるように設計されています。作りはとても堅牢で、履き鳴らしを要求してくるほどガッチリとした作り込みが楽しめます。しかし、履き馴染むに従って心地よい感触がどんどん増してくるのがFG119も魅力の一つです。
本職も欲しがるELBAMATTレザー
肉厚な革は、先ほどもお話ししたイタリアTEMPESTI社のVACCHETTA ELBAMATT(バケッタエルバマット)レザーを使用しています。素晴らしい出来栄えで、多くのファンを魅了し続けている名品と言っても過言ではないでしょう。革自体から漂うクラシカルな雰囲気、使い込むと勝手に味が増してくる性質。非常に魅力的な革です。
クラシカルなディテールも魅力的
各部ディテールも味わいのあるデザインを踏襲しています。古くから伝統的に伝わるスタイルを継承しながら、現代のスタイルにもマッチできるようにモディファイドされた秀逸なデザインをお楽しみいただけます。ハンドメイドならではの味わいをご堪能頂ける逸品です。
安心を求めるVibramラグソール
靴底は、極厚なミッドソールを3枚持ち、本底には同じイタリアのVibram社製ラグソールを装着してあります。ミッドソールをぶち抜くようにビスで補強する念の入れようはマルモラーダ製品ならでは。製法は、ノルヴェジェーゼという昔ながらの登山靴によく使われる堅牢な製法です。特徴的なチェーンステッチは、ノルヴェジェーゼ製法の証し。(靴底周囲を縫っている糸をご覧ください)
浅過ぎず深過ぎない適度なギャップを持つ伝統的なラグソール。星形の爪がフロント6つ、ヒール1つ。周囲には放射状に板状のブロックが整然と並ぶお馴染みのパターンです。比較的ハードコンパウンドにセッティングされたソールで、耐久性が高い。本底は出し縫いしていないのは、剥がれても容易に修復可能なため。なので、日本の高温多湿で使っていると稀に剥がれることもあるが、簡単に修理ができるのも売り難い。もちろんオールソールリペアにも対応します。
ドッシリとした重量感の中身
重量は、サイズによっても違うけれど片足約680g前後あります。手にもつと若干重たいと思う程度です。履けばそれほどでもないから不思議。この重さは、贅沢に使っているELBAMATTレザーの厚み、何層にも重ねられた革とラバーソールの重み、そして職人達が靴に込めた「魂のウエイト」が三位一体となった重量感なんだと感じます。過去に世界的な登山ブームがあり、それが衰退してからも登山靴の復興を願い続けたF.lli Giacometti兄弟が、ドロミテに残る数少ない登山靴メーカーとしての誇りをかけて作るFG105とFG119を筆頭とした製品群への熱い情熱が全て込められているんですね。
一生ものとして、子や孫へ伝えたい
アッパーの耐久性は抜群です。多少ラフに履いてもなんともありません。消耗部分はもちろん修理が可能なので、極々基本的なメンテナンスさえしていれば、何十年でも持ち堪えるだけのポテンシャルを秘めています。こういう靴を年老いるまで大切に長く愛用し、子孫に見せて昔話を語るというのも楽しいと思います。
サイズ選びの参考
サイズ | 対応センチ | 中敷全長 | 靴底実寸(長/幅) |
---|---|---|---|
39 | 25.0 | 25.7 | 27.5/9.5 |
40 | 26.0 | 26.4 | 28.5/10.3 |
41 | 26.5 | 26.8 | 29.0/10.5 |
42 | 27.0 | 27.7 | 30.0/11.0 |
43 | 27.5 | 28.3 | 30.1/11.0 |
44 | 28.0 | 28.9 | 31.0/11.3 |
●木型=282 ●全体的にゆとりのある足入れ感。靴紐をしっかり絞めて甲で固定します。初期カカトは、ルーズめ。靴底が硬いためであり、靴底の返りが出てくれば気にならない。足甲が低い場合はインソールで対処する人もいます。
●サイズ感(スタッフ感想)幅=広め
甲=高め
踵=ゆとりあり
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