オールデン1447とは
オールデンの中でも1、2を争う古参かつ人気モデルであり、多くのファンに愛され続けている「チャッカブーツ 1447」。アメリカで製造され続け、 “made in America” の信念を持った逸品です。その歴史は非常に古く、1990年代には既に誕生していました。
もともと、弊社の会長(当時は社長)が約30年間愛用しているブーツであり、私(現在の社長)もその1999年頃に購入して、現在まで約20年間所有しています。時折、ブログなどにも登場させているので、見たことがある人もいるかもしれませんね!
2006年からは、「NATORIYA」のインソックを搭載したシューズサロンなとりやの別注モデルとして製造され、多くのファンに支持されましたが、革の枯渇に伴い2011年を最後に製造は中断されました。しかし、約13年の時を経てスコッチグレインレザーが復活し、再生産されることが決定。これを記念して、特集ページを制作することにしました。
このブーツが我々はもとよりファンを魅了し続けて止まない理由について、その魅力を深く掘り下げてみたいと思います。
1447の木型(バリー)の魅力
このブーツの木型は「BARRIE last(バリーラスト)」と呼ばれています。有名なモデルでは、990コードバンプレーントゥや1339コードバンチャッカブーツなどが、バリーラスト群の軸を固めています。オールデンらしいポテっとした丸みを感じさせるシルエットが特徴です。一般的な誤解として、丸いトゥデザインから足入れ感がゆったりしていると思われがちですが、実際にはそこまで広くはありません。他のモデルで見られるライニングレスのバリーラストは非常にシャープな印象で、これがバリーラストなのかと思うほど細身のシルエットです。
もちろん、アバディーンラストやレイドンラストほどではないにせよ、トゥルーバランスやモディファイドラストなどの主要な木型と比較すると、細身の部類に属しているようです。バリーラストは非常に歴史が古く、また多くの名作を生み出した木型であり、オールデンの主軸ラストとして高い人気を誇っています。
1447のサイズ感
以下の表は、私の足での各木型ごとのサイズと足入れ感についてまとめた表です。足型やソックスの厚み、その日の体調によって感じ方は変わることがありますので、あくまで参考程度に見てください。
備考 | カーフ | CORDVAN | |||||
size | size | ||||||
トゥルーバランス | +1 | +2 | +1 | +1 | 9 | 9 | |
モディファイド | +1 | +1 | +1 | +1 | 9 | 8h | |
バリーラスト1447 | 基準 | 基準 | 基準 | 基準 | ※1339と比べると少し小ぶり | 9 | 8h |
379X (ミリタリー) | -1 | +1 | -1 | +1 | 9h | 9h | |
アバディーン | 1 | -1 | -1 | +1 | 9h | 9 |
若干ネガティブな部分にも触れておきたいと思います。ただし、これは初期の履き慣らし中に発生するものであり、チャッカブーツ系統全般に共通する話です。必ずしも1447に限ったものではありません。具体的には、履き口のトップラインが足首部分を圧迫することがあります。私たちは噛みつき症候群と言っています(笑)特に薄手のソックスを履いているとその違いを実感できます。
以前、あるお客様に「購入後は足に馴染むまでは長時間履かないように注意してね」とアドバイスしたにもかかわらず、翌日に東京に行ってしまい、酷い目に遭ったというエピソードがありました。「だから忠告したじゃな〜い」と言っても後の祭り。足が回復するまではしばらくお蔵入りとなりました(笑)
自業自得とはいえ、ちょっと可哀想でしたが、そんな彼も今では1447のファンだそうです。
1447の革について
本作品1447の革は、アルパインカーフスコッチグレインレザーと呼ばれる牛革に型押しした本革を使用しています。その特徴として、カーフよりも少し固めでコシのある手触りが特徴です。しかし、履き慣れると足に心地よく馴染み、吸い付くような包み込まれ感を味わえる革なのです。また、比較的雨にも強いと言われ、雨天用の靴としても適しています。本作品のようにブラウン系に染色されたスコッチグレインの場合、秋冬といった季節感を鮮やかに表現してくれる素晴らしい色合いです。
風合いの変化も圧倒的な面白さを備えており、コードバンとは異なりますが、滑らかで優雅な「オールデン皺」が甲の上で語りかけてくるのはさすがです。新品時では気づかなかった魅力も、履き続けることで発見できる喜びをぜひ味わってください。
後述しますが、結構雑に履いても楽しめる革です。初めての傷は結構ショックを受けるでしょうが、その傷ももっと数が増えるに従って気にならなくなり、いつしか傷があることが愛おしくさえ思えるようになってくるから不思議です。革靴の傷は、傷にあらず「勲章」だと思ってあげれば良いのです。それは、あなたが生きてきた証そのものです。新品で購入し、少しずつ履く時間を伸ばしていき、10年、20年、30年。あなたの成長と共に1447もどんどん成長し深みが増していくのです。
1447のコーディネートの幅が広い
素材感や色合いからは、落ち着きのあるアメリカンチャッカブーツという印象を受けます。このデザインは非常に大人らしさを演出してくれて、ツイードやコーデュロイ、フランネルなど、温かみを感じさせる衣類と非常にマッチします。また、アメリカ製の靴ということもあり、デニムパンツとも抜群の相性を見せてくれます。
私が初めて手にしたのは20代でしたが、当時は正直似合わないと感じ、この靴に中身が完全に負けていたように思います。そのため、なかなか出番はありませんでしたが、歳を重ねるごとに少しずつ履く機会が増え、50代となった今ではかなりの頻度で登場するようになりました。仕事柄カジュアルで合わせることが多いですが、シックにまとめても絵になるブーツです。
1447のソールが凄い
1447には、天然ゴムを使用したクレープソールが装着されています。オールデンではこれを「プランテーションクレープソール」と呼んでいます。このクレープソールは肉厚で、フロント部分ではミッドソールを含めて3層、ヒール部分は4層になっています。柔らかいゴムで横方向に畑のような溝が掘られており、路面への追従性はかなり良く、クッション性能もかなり優れていて膝へのダメージを軽減してくれるソールです。
爪先には補強用のレザーが出し縫いで縫い付けられており、さらに4本の釘で補強されています。サイドから見ると、そのレザーはくさび状にカットされていて、クレープソールとの接合面がスムーズに収まるように工夫されています。長く履いていく中で、この釘を打ってある部分の革が薄いため、徐々に革が削れていき、釘も1本、2本といつのまにか抜けてなくなってしまうこともありますが、その他の部分は縫い付けてあるために外れてしまうトラブルはこれまでに皆無です。お客様によっては、購入時にトゥスチールを装着して、爪先先端の削れを防止する工夫をされる方もいます。
写真上=長年履き込まれたソール面でこのあと張り替え修理しました(靴はゴアチャッカブーツ)
写真下=オールソールリペアを機にトライアンフスチールを装着されたお客様の靴
1447のエイジングの面白さ
型押しレザーのアルパインカーフスコッチグレインレザーは、ピートの効いたウイスキーのようなトロンした艶感と樽で熟成されたかのようなブラウン色が特徴です。「この靴だけで今夜は一杯やれそうだ!」なんて言葉も飛び出すほどの魅力的な革です。ここでは、長年履き続けている1447のエイジングシーンをまとめてみました。きれいな状態ではなく、リアルに道具として使った時の表情をお楽しみください。
1447のメンテナンスについて
最後に普段のお手入れについてご紹介します。メンテナンス用品は、以下の3つ+αで事足りるでしょう。肩肘張らずに手入れしたい時にすれば良いです。毎日しなきゃ!と気負ってしまうと逆にしなくなってしまうので、気が向いた時にするので全然OKです。自分で磨いた1447は、とても楽しそうに見えると思います。
もともと水に強いと言われる革ですが、何度も濡らすのはさすがにNGです。そこで、お勧めなのがオールデンから発売されているレザーディフェンダー。これは非常に万能で、コードバンにもお勧めできる優れものの防水剤です。当店では普通の使い方とは違う塗布方法をお勧めしています。詳しくは商品ページで解説しています。
さらに保革と保湿に効果的なオールデン・ファインブーツクリーム。色はニュートラル(無色)です。ホコリを払ったり、クリームを馴染ませたり、仕上げまで対応できるオールデン ホースヘアーブラシも用意すると良いでしょう。毛の色はホワイトがお勧めです。
他にカラークリームやペネトレイトブラシ、クロス、ソールトニック、シューツリーもあれば完璧ですが、ひとまず上記の3点セットがあれば当面はなんとかなりますよ!
メンテナンスする際は、よく乾燥させてから行いましょう。乾燥方法は陰干し自然乾燥がお勧めです。間違っても直射日光やドライヤーのホットで急速乾燥させるのはやめましょう。(冷風はOK!)
まとめ
いかがだったでしょうか。このブーツが好き過ぎてつい長くなってしまいましたが、私の1447への愛が、皆様に少しでもシェアできていたら嬉しいです。1447に限ったことではありませんが、靴はやっぱり履いてこその道具だと思います。高級靴なので、傷や染みは確かに怖いという思いもよ〜くわかりますが、それでは本来の1447のポテンシャルを全て引き出すことはできないでしょう。思い切って、普通に履いてやることで、今まで見えていなかった世界も見えてくると思います。私たちと一緒に1447を楽しんでみませんか。
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