幻のオールデン53501を語る

オールデンファンの皆様。今日もオル活を楽しんでいますかぁ〜? 本日は、幻の名作オールデンを入手した記念に特集ページを作りましたので、ぜひ泥沼へ足首まで浸っていってくださいませ(笑)

幻の逸品は突然やってくる!

本日ご紹介するモデルは、オールデン 533501 プレーントゥダービーです。木型は、モディファイドラストで、革にホーウィン社のシェルコードバン#8(ナンバーエイト)を奢られているスペシャルなアイテムです。日本で最もよく知られているのが、54321 Vチップというモデルがありますが、それとまぁ言うなれば兄弟モデルのような靴です。同じ木型、同じ革、でも顔つきは違います。

なかなか生産が上がらない理由とは?

このモデル、何が特別かといいますと、とにかく生産されないんです(笑)サイズによっては入手するまでに10年待ちも当たり前になっていて、主力サイズに至っても複数年に1度入荷するかしないかといった体たらくです。何故こんなに時間が掛かるのかは、なんとなく想像がつきます。

まず、なんと言っても素材のコードバンレザー不足問題です。革はアメリカのHorween社にて作られている名品のShell Cordovanです。しかし、近年この革がなかなか採れなくなってきています。もともとは農耕馬の臀部の革(お尻の皮)から採れるのですが、Horween社に近い関係者の話では「近年はShellが無い皮が多くなってきた」そうで、特にシェルコードバンにこだわりのあるオールデンでは、なかなか製品化にこぎ着けなくなっているように思います。特にプレーントゥの場合、パーツ数が少ないので、できるだけ傷のない部分を使おうとすると難しい側面もあるのでしょう。(1339や990の出来上がりが遅いのもその為かなと思っています!)

また、木型がモディファイドラストだというのもあるでしょう。ご存知のように特殊な木型で、特に土踏まず側の極端にえぐられている部分の縫製は、技術力のある職人をもってしても中々難しいようで、歩留まりの悪いラストなんです。そこへ持ってきて、日本人は欧米人と比べても平均サイズが小さいですよね。ガタイを大きい職人さんにとって、小さいサイズを作るのはとても負担が大きいようなのです。作っても失敗するくらいだったら作らないという合理的な考えになるのも理解できます。それでなくても希少な馬革が勿体ないことになり兼ねないですし。

こういう背景がある為か、定番モデルである筈の「53501」はなかなか生産が上がらず、やっと出来上がったとしても、極少量しか入手できず。しかも、それが数年に1度なんですから、幻の逸品と私たちは呼んでいるわけです。

モディファィドラスト考察

ラストとは木型のことです。木型とは、靴を作る上で最も重要なシルエットの基礎となるもので、靴メーカーが最も大切にしています。ある取引先での話ですが、「廃業しても木型だけは手放さない!」なんていうことを聞いたことがあります。各メーカーがしのぎを削って開発に当たった木型の全てのノウハウが、この木型に詰め込まれているのですから、その気持ちは良くわかります。

オールデンも多くの名作木型を世に送り出してしていますが、中でも逸品と称されるのがモディファイドラストです。まるで自分専用に作られたビスポークシューズかの如く、めちゃくちゃ気持ちの良い履き心地を堪能できます。しかも、1日履いていても疲れにくいのです。この秘密は、多くのメーカーが研究をしていることと思いますが、何年経ってもこのレベルに追いつくメーカーは現れません。何か特別な秘密があるに違いありませんが、それが具体的に何なのかが分からないところに神秘さを感じます。

よく言われるは、土踏まず部分の独特なえぐれ。およそドレスシューズとは思えない極端な絞り込みを与えてあり、初見の人は足が入るの? 痛いんじゃないの? と不安になる人もいるほどです。ところがどっこい、これが絶妙な匙加減で履いた瞬間に「気持ちいい〜!」となるのです。靴底から土踏まず部分をクイっとリフトアップするような感触は、堪らなく快感です。

ヒールパーツは、フットバランス社製アーコヒールを採用しています。少し斜めに装着されているのが特徴。シングルレザーソールは、出し縫いのグッドイヤーウェルト製法。世界共通の製法で、どこにいても修理ができるので、長く愛用できる伝統の製法を採用しています。ただし、ウエルトには糸穴寿命というのがあって、せいぜい3回ソール交換が限界。頑張って4回。ウエルトがノーメンテで崩壊しかけていると修理不能となることもありますので、ユーザーさんは日頃の手入れを頑張りましょう!
(ちなみに上の写真のシールは、部位ごとの素材を表しているもので、剥がしても問題ありません)

そして、オールデンらしいポテっとしたトゥノーズ周辺のスタイリングも足入れ感の良さに繋がります。英国靴のようなシャープさはないのですが、アメリカ靴らしいラウンド感を与えられたノーズ周辺は、指が無理なく収まるように設計されています。程よく開放的といっても良いかもしれません。正面から見るとアッパー上面の親指部分が一番高い位置にあり、そこから小指へ向かうに従ってなだらかに傾斜しています。

そして、小指側のサイド面はクイっと張り出すようにボリューミーなシルエットを描いています。だから無理なく足指が収まるんでしょう。また、写真でもわかるように踝部分の履き口トップラインの高さが、内側と外側で極端に高さが違うのもわかると思います。そびえるように立っているインサイドの壁に対して、アウトサイドのトップラインは、大きくえぐられています。これによって、外踝にエッジが当たらないように工夫されています。これだけでも足首の自由度が違いますから。こういう着眼点もさすがです。

ヒールカップはゆったりとしているのもこの木型の特徴です。ヒールカップは小さい方が良いという声も聞きますが、多くの場合そんなこともなくて、できるだけゆとりのあるフィーリングの方が、長時間の使用に足の快適さを保てるようです。また全体のバランスの中で見つけたオールデンならではのヒールカップとも言えますけれど、他のメーカーに比べてゆとりがある設計です。モディファイドラストは、土踏まず部分で履く靴。シューレースをしっかりと締め上げて、足の中心部分で靴と足を一体化させることで、前後のゆとりがあっても快適に履けるのです。他のメーカーにはないユニークな履かせ方だと思います。

珠玉のシェルコードバンの魅力

53501には、世界最高峰のシェルコードバンレザーを奢られています。アメリカのHorween社(ホーウィン)が誇るShell Cordovanは、100年以上に渡り使われてる「Pit」と呼ばれている地下槽で1年掛かりで鞣した革を使用しています。その際、特別なレシピにより大量にオイルを充填された革は、とても温かみのある風合いのコードバンとなります。世界には何社かコードバンを製造しているメーカーはありますが、多くは若干乾いたような硬い印象の革が多くそういったコードバンしかしらない人の中には「コードバンって硬いですよね」と聞かれることもあるのですが、ホーウィン社のシェルコードバンは、実はそこまで固くなく、それどころが足にとてもよく馴染んでくれてどちらかというと柔らかい印象です。その点で明らかにアドバンテージを有していると思います。

出来上がった珠玉のシェルコードバンは、オールデン社へ送られ、そして革靴と第二の馬生を歩み始めます。靴を製作する過程で、最後の仕上げに艶を出したり仕上げ剤でさらに魅力を引き出します。新品時こそ黒と見まごうほどの濃い色の#8(ナンバーエイト)バーガンディーカラーですが、使い始めると少しずつ履きじわの谷になる部分から色が明るくなって行くのがわかります。濃い色合いを維持したい人は、純正#8クリームで補色するのも良いですが、無色のクリームでメンテナンスし続けることで、艶のある独特に変化を遂げた#8シェルコードバンを楽しむこともできます。どう変化するは個体差もありますし、個人差もあるので一概にこうなりますとは言えないのですが、それはそれでとても愛着の湧く表情へと深化を遂げてくれるでしょう。

53501写真集

オールデン53501総括

如何だったでしょう。オールデン53501は、同社の誇るフラッグシップのプレーントゥでありつつも、近年なかなか入手することができない幻の逸品であり、その理由も少なからず垣間見えたと思います。また、どうして長年に渡りオールデンが愛されているのか、名作と呼ばれ続けているのか、その理由もデザインのみならが、履き心地とエイジングの面白さがあってこそであることをご理解いただけたでしょうか。

この素晴らしい靴は、タイミングよくMyサイズが入荷することは難しい状況ですが、運良く巡り会えた時のためにオールデン53501貯金をしておくことをおすすめします! 

「えっ? 奥さんの目が怖いですって?」そこは、「嫁には内緒でオールデン!」で行きましょう!

 なんとかなります(笑)

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