究極のスプリットトゥUチップ

VIBERG Savoy Cordovan Mahogany

カナダの自然豊かなVancouverで、わずか40名の精鋭職人によって作られたハイエンドシューズVIBERG。数多く展開されるモデルの中でも主力級のモデルとして展開されているのが、このSavoyです。そして、今回ご紹介するモデルには、Horween社との共同開発で生まれた唯一無二のスペシャルレザーBoxboard shell cordovan Mahoganyを纏ったトップ of トップとして君臨するスペシャリティシューズです。

唯一無二のBoxboard Shell Cordovan Mahogany

VIBERGのSavoyモデルに使用されているBoxboard shell cordovan Mahoganyは、まさに革靴愛好家の心を掴む特別な存在です。この革は、VIBERG社のBrett VIBERG氏が直接Horween社長のSkip氏に製造を依頼して実現した、VIBERGの実質的なエクスクルーシブレザーです。

革の特徴

  • Pioneer Reindeerと呼ばれるプレートを使用して作られた独特なシボ
  • 一見するとコードバンに見えない独特の質感
  • 履き込みと磨きによって明確になるシェルコードバンの特性

この革の魅力は、単なるシェルコードバンを超えた独特の表情にあります。新品時には「これがシェルコードバンなのか?」と疑いたくなるほどの独特な質感を持ちながら、使い込むことで徐々にその真価を発揮していきます。

下の写真は、牛革のPioneer Reindeerで、日本ではハッチグレインと呼ばれている革です。この美しいシボの模様をシェルコードバンで表現したのが、Boxboard shell cordovanと呼ばれます。

耐久性とメンテナンス

見た目の美しさだけでなく、とても丈夫で耐久性に富んでいる革です。日本で普通に見ることのできるシェルコードバンは、雨にデリケートな革と言われますが、Boxboard shell cordovanは、完全ではないにしてもかなりの耐性を持つようです。実際に私物のVIBERGを雨天テストしておりますが、そのダメージは、通常のコードバンよりも遥かに少ないのです。

この革には、様々なクリームが使用可能ですが、私が試した限りですとサフィールノアール クレム1925シアバタークリーム ニュートラルと好相性でした。わずかな量を指に取り、円を描くように浸透させてからブラッシングで仕上げていただくことで、色目が安定し、艶を維持または復活させることができました。

私はさらにオールデン社のレザーディフェンダーを1度だけ塗布した上で、雨天で少し履いてみましたが、今のところ調子良く過ごせています。もちろん若干の雨滲みやドットマークは出来るものの大したダメージはなく、さらに先ほどのサフィールのクリームとブラッシングだけでかなり元通りになるのですから、いかに優れた革なのかが理解できると思います

秀逸な木型と構造

2030Eラスト

Savoyモデルには、VIBERGの名作Regent(モンクストラップ)と同じ「1905E」ラストが使用されています。この木型番号は、初代VIBERGがスタートした年であるとBrett(VIBERG社長)から聞いています。(創業年は1931年)

この木型は以下のような特徴があります。

  • ゆったりとした表情のラウンドトゥ
  • ふっくらとした程よいボリューム感
  • 適度なホールド感と快適な履き心地
  • 2030Eよりもわずかにゆとりがある

卓越したシャーシ構造

VIBERGの靴は、その内部構造にも妥協がありません。

  • 6mmもの厚さを持つチャネルドインソール
  • 100%天然皮革のパーツ使用
  • グッドイヤーウェルト製法による耐久性と再製作可能性

この独創的なチャネルドインソールは、実は100年近く前までは至る所のシューメイカーが採用していた古典的靴作りの原点であったようです。しかし、あまりにも手間とコストが必要なこと、このインソールを作るために専用マシンが必要ですが、現代において製造している工作機械メーカーが存在しないことなどを理由に廃れました。今ではこの製法で量産靴を行なっているほぼ唯一現存するメーカーとしてVIBERGが知られています。

履き慣らし期間は30回〜60回

このチャネルドインソールを靴の中心に据えて、アッパーとソールが見事に一体化している為、非常に優れた耐久性を確保しているのです。6mmもの厚みを誇るオークバークレザーを使う為、履き慣らしに延30日みてくださいとわざわざ取扱説明書を同梱させる徹底ぶり。しかし、私が試した限りでは、おそらく多くの日本人がそうであるように、靴を脱ぐ文化で育ってきた為、欧米人の人よりも靴を履いている時間が短く、また体系的に華奢であることを想定して、倍の60日程度が理想的な履き慣らし期間ではないかと考えています。

つまり、こうです。

週に1回靴を履くとして、延べ60回履くのに必要な期間を計算しましょう。まず、60回を週数に変換します。
週に1回靴を履くので、60回履くには60週かかります。次に、60週を月数と日数に変換します。
1年は52週なので、60週は1年を超えます。
具体的には:

  • 52週 = 1年
  • 残り8週 = 2ヶ月(1ヶ月を4週と概算)

したがって、60回靴を履くのに必要な期間は:

1年2ヶ月

より正確に日数を計算すると:
60週 × 7日/週 = 420日

これを月と日に変換すると(1ヶ月を30日と仮定):
420日 ÷ 30日/月 = 14ヶ月14ヶ月は1年2ヶ月に相当します。

結論として、週に1回靴を履くとして、延べ60回履くには、1年2ヶ月(約14ヶ月)必要です。

気が遠くなりますか? いえいえ、たった1年2ヶ月です。ちなみに、このチャネルドインソール用の革を鞣してオークバークレザーとするまでに約12ヶ月、アッパーのシェルコードバンを作るのに数ヶ月程度、パーツを揃えて靴を完成させるまでに数ヶ月〜一年と言われています。多くの人の手と時間をかけて作られるVIBERGのハイエンドシューズ。その背景を知れば、60回履くまでの時間も、むしろ特別なプロセスの一部として楽しめるはずです!

日本の路面環境にベストマッチのソール

ソールは、イギリスHARBORO社製のリッジウェイソールです。肉厚なゴムと細かなサイプが刻まれたトレッド面は、イングランドのリッジウェイ・トレイル(約3,500年前にさかのぼる古代の交易路)に由来しています。非常に美しいトレイルで、一度は旅してみたいところです。写真をみるとこの風景から着想されたソールだということがよくわかります。歩くためのパーフェクトなソールです。

履き心地と経年変化

Boxboard shell cordovan Mahoganyを使用したSavoyは、履き始めこそ強靭な作りゆえに足首を中心に格闘する日々が続きますが、その分だけ頑丈さと耐久性を実感できます。

革の表情変化

  • ゆったりとした滑らかな履き皺
  • 牛革とは一線を画す独特の表情
  • マホガニーの染色変化を楽しめる

約60日間の使用で、甲に入る皺はゆったりとした滑らかな表情を見せ始めます。これは馬革コードバンならではの魅力であり、コードバンシューズの魅力を存分に味わえるポイントです。

(下の画像は私のRocklandです。)

お手入れと防水性

シェルコードバンの特性上、水には強い革ですが、さらなる防水性を求める場合は以下の対策が効果的です。

  • オールデン社のレザーディフェンダーを複数回塗布
  • 定期的な磨き込みによる光沢の維持と向上(クレムがお勧め)
  • ラバーソールコバ面は、ブーツバッファーを塗り込むと防汚と劣化防止できる
  • 馬→豚→馬→山羊の順番でブラッシングすると美しい仕上がりになる
  • お手入れ時のシューツリーはあったほうが良いが、保管時は無理に入れなくてもOK

コーディネート

Savoyの洗練された佇まいは、様々なスタイルに対応可能です。

  • スマートカジュアルスタイルのアクセントで好印象
  • ジーンズとの組み合わせでラグジュアリーなカジュアルスタイルを演出
  • 秋冬はフランネル素材のパンツやツイードともよく似合う
  • シューレースを細いロウビキ平紐にすればスーツスタイルでも似合う

Photos album

結論

VIBERG Savoy Boxboard shell cordovan Mahoganyは、単なる靴を超えた芸術品と呼べる逸品です。その独特な革の質感、卓越した職人技による構造、そして時間とともに増す魅力は、真の革靴愛好家の心を掴んで離しません。高価格帯ではありますが、その価値に見合う満足感と長年の愛用に耐える耐久性を兼ね備えた、まさに「究極」と呼ぶにふさわしい一足と言えるでしょう。

(※)いつも通り調査を重ねた上で執筆しておりますが、解釈に誤りがある場合もございます。その際はぜひご指摘いただけますと幸いです。

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