心臓を突き破るような象革の靴との出会い
イタリアのドロミテにあるフラテッリジャコメッティ社へ製造を依頼して作られたスペシャリティローファーFG257 ELEFANTE GRIGIO の特集ページへようこそ。シューズサロンなとりやでは、2010年頃に初めて同社製ローファーLuiginoという木型のモデルを扱いました。ですから執筆時点でかれこれ14年の月日が経つわけです。その間、さまざまなLuiginoローファーを展開して来ましたが、昨年2023年3月に初めてエレファントレザーを用いたローファーを店頭に並べました。
これまでにもエレファントレザーを使ったトレッキングブーツやサイドゴアブーツ、グルカサンダルを展開してきましたが、数ある革靴デザインのなかからローファーというある種奇を衒ったような組み合わせを思いつき、ダメもとでオーダーしたのが2022年。そして約1年後に出来上がってきたそのローファーを初めて見た時の感動たるやまさに「電気が走る」とはこのことか! と凄まじいショックを覚えました。
この感覚はなにも僕らだけではなかったようで(笑)大のおとな達が一目惚れ状態に陥る不思議な日々がわずか数日間展開されました。そう、あっという間に愛する人に連れて行かれたルイジーノエレファント達。これは、もっと恋をしたいおとな達がいるかもしれない。そういう思いで気がつけば、リオーダーを決意。そして今回再び1年掛かりで生産が上がったのです。
アフリカ象の咆哮が聞こえる
聞くところによりますと象革はワシントン条約によって厳しくその扱いが制限されていて、そう易々と入手できるものではないとのこと。今もそうかわかりませんが、当時はジンバブエ産のいわゆるアフリカ象から採れた皮を使って作られた革靴で、おそらく今でもそうだと思われます(確かめてはいないけど)。
僕の些細な知識では、ジンバブエの隣国ボツワナには「象の楽園」とも呼ばれる広大な大地に約7万頭もの象が生息し、国によって管理されていると聞きます。それでも数少ない象です。わざわざ革製品にする為に生かしているわけではなく、たまたま何らかの影響で天に召された象から得られるいわゆる副産物としての革を頂いて作られているのだと思います。そういうことを知れば知るほど、かけがえのない生命の一部を分けていただいているんだなと感じます。
そんな希少なアフリカ象の皮がイタリアに渡って靴となり、それが日本の片田舎の直江津に来て無類の靴好き達のもと永遠の命を与えられて生きながらえている。そんなロマンに思いを馳せるのでした。いつまでも作りつづけることができるわけではありません。おそらく今後も制限は厳しくなり続け、価格も高騰し続けるでしょう。所有できたという喜びを胸に秘め、大切に所有し続けていって欲しいです。
スペック
●サイズ感
(スタッフ感想)
長=普通
幅=普通
甲=低め
踵=普通
●コメント
木型=Luigino
甲低めです。それ以外は普通です。
●主な素材
ELEFANTE (象)
●内装素材
総本革張り
●底材材質
シングルレザーソール(タバコ) Goodyearシングルウエルト
●インソール(中敷)
レザー
●計測サンプル
size40
●底厚(コバ含)
前=約10mm
後=約26mm
●履口高さ
カカト=約5.8cm
外くるぶし=約4.3cm
内くるぶし=約4.4cm
●重量or容量
約438g
●製造国
イタリア
●備考
ソール加工可能な部位は、ヴィンテージトゥスチール装着、ハーフラバー装着が可能です。お申し込みは、それぞれのページからお願いします。※加工後の交換返品はできません。
●その他
希少な天然象革素材のため個体差・左右差が出る場合がありますが、不良ではありません。あらかじめご了承お願いします。
メンテナンスのアドバイス
エレファントレザーは、意外に思うかもしれませんが牛革などと比べると雨にも比較的強い革だと思います。ですが、防水処理をすることで、さらに安心して長く楽しんで頂けることでしょう。また保革方法は、ちょっと注意が必要です。クリーム類は実はあまり相性が良くありません。下手に使うと質感を損ねてしまうからです。僕は、ドイツのコロニル社から発売されているシュプリーム・プロテクトスプレーを推奨しています。これは、必要な栄養を革に与えつつ防水もしてくれる優れものです。普通の革靴のように磨く楽しみはないかもしれませんが、それをカバーするだけの質感と存在感がエメファントレザーの魅力だと思っています。また、靴底はソールトニックで適宜ケアしておくと革底の良い状態を長くキープすることができます。あとは適宜ブラッシングですね。
ソールのカスタム
最近は、革底へラバーソールを貼る人も増えて来ました。いろいろな種類がありますが、定番的におすすめできるのはvibramハーフラバー。薄いラバーですが、しっかりグリップしてくれて、屈曲性とクッション性能も高まり気持ち良く履けます。車の運転もしやすくなると評判です。また、同時につま先の減りを防ぐ目的でトゥスチールを装着する人も増えています。もし加工するのであれば、購入初期にするのが最も綺麗に仕上がるのでおすすめです(もちろん使ってある革底にも対応可能)。これらと一緒に組み合わせるのがラバーヒール。これは絶対必要というわけではありませんが、よりコンフォータブルに仕上げたいというニーズを満たしてくれる加工になります。
フォトアルバム
今後の入手の可能性は?
今後ももちろんチャンスがあれば製造を依頼する予定です。実際にすでにリクエストも頂いており、前回そして今回と入手できなかったお客さまは、次回のチャンスを掴んで欲しいと思っています。ただ、毎回入手できるのは少量で、納期も年々押し押しになって来ているので、気長に待てる気概を持てる人に限られてしまいますが…。NATORIYAファンズの革靴好きなら待てますよね! きっと。
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